Q:「鉄人レース」と言われる過酷な競技にチャレンジしようと思い立った理由は。
境:最初は、ものすごく軽い気持ちだったんです。2歳の頃から水泳を始めて、中3まで地元のクラブチームに所属し、同時に中学から高校にかけては陸上部で、短距離競技に出場していました。中学ではジュニアオリンピックの女子100mで3位を獲得したほか、高校でもまずまずの記録を出せたんですが、その反面、『陸上競技では、もうこれ以上の成績は出せないかもしれない』という気持ちがあったんですよね。
共立大学への入学が決まり、陸上を続けようか、水泳に戻ろうか…と迷っていたところに、友人のお父さんから「トライアスロンをやってみないか」と誘われまして。その方から、北九州にあるトライアスロンチームを紹介していただくことになったので、じゃ、試しにやってみようかな…と。
Q:でも、水泳も陸上も「スプリント」が専門だったんでしょう?苦労したのでは。
境:そうなんですよ!実際に始めてから痛感したんですが、スイムもランも、短距離と長距離とでは使う筋肉がそもそも違うし、走り方のフォームも泳ぎ方も全く違うんです。『しまった、失敗したかも…』と、正直思いましたね(笑)。
でも、自分で決めて始めたからには、投げ出すのは絶対にイヤだったんです。だから、まず泳ぎ方や走り方を根本的に変えることから始めました。
Q:バイクも初チャレンジだったのでは。
境:ええ、自分の考えが本当に甘かったことを、バイクの練習で改めて思い知りました(笑)。
子どもの頃から自転車を乗り回して遊ぶことが多かったから、大丈夫だろうと軽く考えていたんですよね。ところが、実際に競技用ロードバイクに乗ってみると、タイヤが細いからバランスは悪いし、靴の裏がペダルに固定されているから、コケそうになってもとっさに足が出ないし。最初は、シャレにならないくらいのケガもしました。
何もかも1からのスタートだったわけですけど、やるからには絶対に上を目指さなきゃ…。そういう想いで、最初の1年間はひたすら「慣れる」ことと、「息をもたせること」だけをテーマにして、ほぼ毎日、チームの練習とは別に1時間以上走り続ける練習を繰り返しました。
Q:トレーニングの手応えを感じ始めたのは、いつ頃から?
境:「楽しい、これならやれる!」って初めて感じたのは、2年目に入って日本学生トライアスロン選手権に出場した時。学生ばかりだと、それほど競技慣れしている選手もいませんから、スイムもバイクも先頭集団についていくことができました。 最後のランで巻き返されてしまいましたけど、練習に対する意識が変わったのも、もっと上を目指したいと強く思い始めたのも、この大会からです。
Q:その後、大きなレースにも出場するようになったんですね。
境:はい、大きなレースに出て色んな刺激を受けることで、自然と練習量も増えてきました。スイムやランで、自己ベストのタイムを出せるようになってきたのも、開催規模の大きなレースに出るようになってからです。
ただ、学生大会とは「戦い方」が違うんですよ。インカレの場合、学生同士ということもあって、『みんな一緒にゴールしよう』みたいなムードがあります。ところが、プロが参加する大会になると「勝つ」ことが目標ですから、様々な戦略を持って競技に臨む選手ばかりなんです。
もちろん、そういった選手と競うのは勉強になりますが、まだまだ自分は甘いなぁと、出場するたびに痛感させられます。国内最大の大会である日本トライアスロン選手権にもエントリーすることができましたが、結果が出せていないので、まだまだダメだと厳しく考えるようにしています。
Q:競技での当面の目標は。
来年の目標は、インカレ10位以内への入賞と、日本選手権20位圏内入りです。この目標があるからこそ、練習もこれまで以上に頑張れるし、作戦の組み立ても自分なりに工夫できるようになりました。
完走さえできれば実現可能な目標だと自負していますから、最終的にはオリンピック出場まで目指したいと考えています。
Q:キャンパスライフについて。好きな講義などはありますか。
境:樋口先生の栄養学ゼミを、毎回楽しみにしています。1人暮らしを始めて以来、部屋ではインスタント食品やお弁当ばかり食べていたんですが、このゼミを受けるようになって食事に対する意識が大きく変わりました。
トレーニングでヘトヘトになって帰ってくると、『面倒だからインスタントでイイや』という気分になりがちですけど、トライアスロンの成績を上げるためにも、毎日の栄養バランスをきちんと考えるようになりました。樋口ゼミを受講したおかげですね。
Q:トレーニングのかたわら、教職の講義も受けているそうですね。
高校の体育教員になることが、私にとってはオリンピック出場と同じくらい大切な目標です。
高校時代、陸上部顧問の先生が口にしていた『努力すれば結果は自ずとついてくる』という言葉に、いつも元気づけられていました。熱い情熱を持っていて、本当に生徒思いの先生だったんです。今でも時々、電話で近況報告したりするんですが、私もああいう体育教師になりたいと憧れ続けています。
近所のスイミングクラブで、インストラクターのアルバイトもやっているんですが、子どもたちが素直に純粋に頑張っている姿を見ていると、ますます「先生」という職業への憧れが強くなってきます。
Q:トレーニングと勉強の両立について、後輩たちにアドバイスを。
境:うーん、両立できているかどうか、実は自信が無いんですけど(笑)。ただ、どんなにキツくても、毎日1ページだけでも良いから、テキストに目を通すよう頑張っています。テキストを読んでいるうち、つい、うたた寝してしまうこともありますが(笑)、少しずつでも毎日続けることが肝心だと思います。
それから、漠然と『教員になりたい』と考えるのではなく、教員になって何をするのか…という目標を持つことも大切だと思います。私は、高校の体育教師になる夢が叶ったら、「トライアスロン部」の設立を学校に要請しようと考えているんですよ。私が、コーチや先輩方から色んなことを教えていただいているように、将来は私が、高校生たちに指導していく番だと考えています。
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